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故郷の味

大田 萌子 2020.11.27

私は学生時代、ポーランドの作曲家について研究していたので、何度かポーランドへ行っています。
食べ物、風土、そして様々な経験が相まってポーランドは私の大好きな国のうちの1つです。

沢山好きなものはあれど、やっぱりまずは食べ物!
ピエロギというゆで餃子(サワークリーム入り、ジャムをかけた甘いものもあります)
ポンチキという揚げパン(ポンチキの日というのがあり、その日はみんなで食べます。バラのジャム入りがおいしい)ジュレックという、発酵麦のスープ(味噌汁的な。)ほかにも、日本人の舌に合いそうな食べ物がたくさんあります。その中でも、私が一番好きなお菓子が「ピエルニク」
シナモンの効いたジンジャーブレッドのような感じの伝統的なお菓子です。

トルンという世界遺産の街(コペルニクスが生まれた場所でもあります)で昔々から作られているお菓子です。

クリスマスシーズンなどには、アイシングされ、ツリーのオーナメントとして吊るされたりもしています。まぁ、この「ピエルニク」がとにかくおいしいのです!初めて行ったときにスーパーで何気なく買ってからはまってしまい、毎回大量に購入してきていますが、日本ではなかなか手に入りません。

まさかピエルニクを買うためだけにポーランドへ行くわけにもいかず(行きたい位だけれど)行く機会を虎視眈々と狙っていたところに、今年は5年に一度のショパンコンクールイヤー。よし!コンクール観戦に行く人に頼んで買ってきてもらおう!と思いきやこの状況下でコンクールも延期。残念、今年も食べられず…。と思っていたら、まさかまさかの。
カルディさんで見つけました。クリスマスのシーズンだけ輸入しているそうです。思わずあるだけ購入…笑


しかも、トルンの街の「コペルニク」という会社のもの。
ここは、もう名店中の名店です。

袋を開けた瞬間香る、ジンジャーとシナモンの香り。様々な記憶がふわっと蘇り、感動しながら食べました。

実は、ピアノの詩人と謳われたかのショパンも、トルンで食べたこのお菓子を大変気に入り、ワルシャワの自宅に箱で郵送したそうです。そして、毎朝ココアとともに食べてから一日を始めていたとか…

帝政ロシアの圧政から逃れ、自由に音楽活動をするために、ショパンは20歳で愛する祖国を離れます。
その後、結局一生ポーランドの土を踏むことはありませんでした。
祖国を離れたころに書いた革命のエチュードの直筆譜と、晩年の大作、幻想ポロネーズの直筆譜を見比べても

ショパンが様々な事に苦しんでいたことをまざまざと見せつけられます。その苦しみの一つは、強烈な郷愁であったことでしょう。
死の直前、心臓だけはポーランドへ…と言い残し、その遺言通りワルシャワの聖十字架教会にショパンの心臓
は安置されていますが、その事実一つとってもどれだけショパンが祖国に帰りたかったか…その心情を考えると胸がつぶれる思いです。

もしかしたら、ショパンもパリの地で病に臥せりながらこの味に思いを馳せることがあったかもしれない…
そんな思いにふけりながら、ピエルニクを食し、ショパンの作品の中でもよく弾かれるノクターン嬰ハ短調遺作
を弾いてみた秋の昼下がりです。


ちなみに、ピエルニクを味見してみたい方は(私が食べつくす前に)お気軽にお声がけください♪